京都で天然素材の服をつくるNADELLが、南インドで手摘みされた「スビンコットン」で、スタンドカラーのシャツを仕立てました。
世界じゅうの綿花のなかでも、長く細い繊維をもつスビンコットン。
その生地に出会い、一枚のシャツに仕立てるまでのお話です。

アトリエの机に、生地を広げます。ミルクティと名づけた、ベージュにわずかな温かみを含んだ色。手のひらを置くと、綿らしい乾いた感触のあとに、少し遅れてやわらかさが返ってきます。
この生地にはじめて出会ったときのことを、よく覚えています。光の当たったところが、絹のように見えました。綿だと分かっているのに、思わず、美しい、と口に出していました。
薄手で軽いのに、引っぱるとしっかりと張る。この二つが一枚の布のなかに同居しているのが、スビンコットンという綿の性質でした。
スビンコットンは、インドの南部、ごく限られた土地でだけ育ちます。ある程度の高さのある土地であること。山から涼しい風が降りてくること。夏は暑く、水が豊かにあること。この条件が重ならないと、うまく実らないと聞いています。
育つまでの時間も、ふつうの綿より長くかかります。畑に立っている期間が長いということは、その分だけ、干ばつや長雨、洪水にあう機会も増えるということです。作り手の方々は、スビンのほかに短い期間で穫れる作物も一緒に植えて、畑ごと失わないようにしておられます。
収穫は、機械ではなく人の手で。ひとつずつ摘みとられていきます。

綿の繊維の細さは、マイクロネアという数字であらわします。数が小さいほど、一本が細いということです。ふつうの綿がおよそ四前後といわれるなかで、スビンの初摘み(はつづみ)は二・九ほど。とても細い部類に入ります。
糸を紡ぐとき、この細さが効いてきます。同じ太さの糸をつくるのに、細い繊維ならより多くの本数が要る。本数が多いぶん、一本ずつが支え合うので、撚(よ)りを強くかけなくても糸が保ちます。
撚りとは、繊維をねじり合わせることです。強くねじるほど糸は丈夫になりますが、そのぶん硬くなります。スビンは、ねじる力を弱くしたままで強さが出る。硬くせずに済むから、やわらかい。手にした感触の理由は、そこにありました。
薄手で軽いのに、着ていて頼りなくならないのも、同じところから来ています。

細いから、
やわらかくできる。
前立てには、貝ボタンを並べています。胸まわりは四角いかたち。襟もとといちばん下だけ、丸いかたちを置きました。丸のほうは色も少し濃く、ほかより落ち着いた灰色をしています。
四角い貝ボタンは、貝を四角く抜いてつくります。丸より手間がかかるぶん、面の光り方が一つずつ違います。前を留めたときに、まっすぐな縁が縦に並ぶのも、丸だけの並びとは違う見え方になります。
遊びのつもりで混ぜたところですが、着てしまえば、ほとんど気づかれません。近くで話しているときにふと目に入るくらいの、小さなことです。

襟は、折り返さないスタンドカラーです。首まわりに沿ってまっすぐ立ち上がるので、首もとが縦にすっきりと見えます。一つめのボタンを外しても、襟が崩れません。
胸には、縦長のスクエアポケットを左右に。ふつうの胸ポケットより下、みぞおちの高さあたりに置いています。角を出したかたちなので、四角いボタンと並んだときに、線がそろって見えます。
身頃は、体に沿わせたコンパクトな仕立てです。背中には切替えを一本入れ、そこにわずかなゆとりを取っています。腕を前に動かしても、肩まわりに窮屈さがありません。
袖は長袖で、袖口はカフス仕様。裾は前後とも緩やかなまるみ丸みをつけています。そのまま裾を出して着ても重たく見えず、パンツにもスカートにも、腰まわりがすっきり収まる丈です。
全体に小さめの寸法です。ゆとりを持って着たい方、サイズに迷われた方は、ふだんよりひとつ上をおすすめしています。



洗い方を教えてください。
洗濯ネットに入れて、ぬるま湯(四十度まで)で。中性洗剤を薄めてお使いください。漂白剤は入れずにお願いします。脱水は短く、三十秒ほどで足ります。
しわは気になりますか。
薄手の綿ですので、しわは入ります。脱水のあとすぐに取り出して、手でしわを伸ばしてから干していただくと、そのまま落ち着きます。アイロンは中温で。少し湿っているうちに掛けると、早くきれいになります。
着るうちに、生地は変わりますか。
やわらかくなっていきます。撚りの弱い糸で織っていますので、洗うたびに繊維がほぐれて、肌に沿う感じが増していきます。はじめの張りが少しずつ落ちていく、その移り変わりも含めてお付き合いいただけたらと思います。

手にしたときのやわらかさを、
そのまま一枚のシャツに。